子供の「道徳の教科書」を、親が読んでみた~②「いじめ問題」
道徳教育が、「特別の教科」となったのは、
小学校で2018年、中学校で2019年からだそうです。
びっくりです。
最近じゃないですか。
今までは、「道徳の時間」が週1回、教科外活動としてあっただけだったそうです。
どうりで、あまり記憶にないはずです。
週1の道徳の時間ですら、他の授業よりも軽視され、遅れている他の授業の補填に使われていた学校もあったそうです。
しかし、道徳が教科化して、年間35時間確保しなければならなくなりました。
その理由は、他でもない 「いじめ問題」 の為だそうです。
現実のいじめ問題に対応できる資質・能力を育む為には、
「あなたならどうするか」を真正面から問い、自分自身のこととして、多面的・多角的に考え、議論していく「考え、議論する道徳」へと転換する事が求められています。
(引用文:文部科学省)
前回は中学3年の娘が捨てようとした、中学2年の時の道徳の教科書『新しい道徳2』東京書籍
について読んでみて、その概要を記事にしました。
よろしければ、ぜひご覧下さい。
今回は、テーマにそってに、内容をレビューしていきます。
今回のテーマは、道徳教育改革の原点「いじめ」です。
これは、さけては通れない問題です。
P22 『いじめのない世界』へに焦点を絞ります。
いじめのない世界へ
集団や社会との関わり
この問題は、集団や社会との関わりとして分類され、差別や偏見のない公正・公平な態度で
の中に属しています。
いじめのない世界へ
P22 私のせいじゃない
その教科書には、一枚の写真がのせてありました。
そして、3つの質問が書いてあります。
Q1 この子 が泣いているのはだれのせいだろう
Q2 この子は何が悲しくて泣いているのだろう
Q3 この子が泣いているのを見ている人たちは、どのようなことを考えているのだろう。
この質問に対する答えを、グループディスカッションするようです。
思い返せば、昭和の時代は偉い人の書いた文章を読んで感想を言うぐらいだったような気がします。
「~だからいじめはダメ」的な事を書けば◎をもらえました。
しかし、現在の教科書は、文章を読む事がメインではないようです。
この教科書から読みとれる事は、
100回いじめはダメと書くよりも、1回自分のこととして想像してみよう
という事なのです。
ちなみにうちの子がこの質問の答えを教科書に書いてました。
Q1のA クラスのみんなのせい
Q2のA ぼっち
Q3のA 私は悪くない
この答えを見てぞっとしましたよ。もっと考えなさいよ! 親として心配になりました。この想像力のなさ。やばいです。
掲載されている詩
いじめてる君へ 春名風花
想像してください。
君があざ笑った子が
はじめて立った日、はじめて歩いた日、はじめて笑った日、
うれしくて、泣いたりした人たちの姿を。
君がキモい、ウザいと思った人を、
世界中のだれよりも、自分の命にかえても
愛している人たちのことを。
そして、その人たちと同じように
笑ったり、泣いたりして君を育ててきた、君のお父さんやお母さんが
今の君を見てどう思うのか。
今いちど、考えてみてください。
私は、この詩を読んで、いままでの痛ましいニュースを思い出し、涙が出てきました。
胸がつぶれそうなくらいです。大人になると、この意味が実感として伝わりますが、
子供達はわかってくれるでしょうか。
自分はからかっているだけという認識の人がここまで想像してくれなそうな気がします。
とにかく、相手の身になって考えてほしいものです。
考察
芥川龍之介は、自署の侏儒の言葉で、道徳についてこう言っています。
「道徳は古着である」
と。
芥川の、道徳というものは、過去の人が決めたことにあぐらをかき、教える立場の人間が、楽するために決めたものでしかないという認識がにじみでている名言です。
道徳という言葉が嫌いで、「左側通行」と同じだとも言っています。人間を同じ流れにしたいだけだと。
私もどちらかといえば、同じ意見でした。
しかし、現代の道徳は変わり始めています。
この教科書の進め方は、古着ではないように思います。
少し前から言われている事ですが、学ぶべき事は、想像力です。そのためにたくさんの校長先生やら、大学教授やらが頭から湯気が出るくらい考えている事が、すごく伝わる教科書です。
そして、掲載されている文章は、ほとんどが生徒の作文です。
あり来たりの、「左側通行」の議論はどこにもありません。
いじめ問題は、もっともっと奥が深く、簡単にまとめることは出来ませんが、
ただ、切実に思います。
愛している人たちの事を、もっと想像してほしいと。
自粛期間中、子供は学校からこのテレビを見るように通達がありました。そして、感想文を書いていました。
最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。
参考: 新しい道徳2 東京書籍
文部科学省 文部科学大臣メッセージ
執筆: NANDEMO編集部 あまたつ